先天性CMV感染児がいらっしゃる方は、このページを印刷し、説明資料としてご利用ください。

(1) サイトメガロウイルス(CMV)児の対応
(2) 園医、校医にお願いしたいこと
(3) 保育士、幼稚園教諭(その他、乳幼児と係る職業の女性)自身が妊婦の時は特に注意!!

(1) 先天性サイトメガロウイルス感染症の児の入園を拒否したり、隔離したりする必要は全くありません。

現実として、先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染児の受け入れを拒否している保育園や幼稚園は存在します。
拒否する側があげる理由は「他の児童に伝染ると困る」「妊婦の保護者がいるので何かあったら責任が取れない」「対応できるスタッフがいない」などです。
しかし、これらはすべて、先天性CMV感染児を受け入れられない理由にはなりません。なぜなら、その子がいなくても園内にもともとCMVは存在するからです。

多くの母親はすでにCMVに感染しています。そしてウイルスは産道に、そして出産後は母乳の中に排出されます。したがって、感染した母親から生まれてくる子どもは分娩に際して、または母乳を飲むことによって感染します。
そして感染した子どもは数か月から数年にわたってウイルスを唾液や尿に排出し続けます。
「よだれ」や「おもらし」の多い園内の環境で、同じおもちゃを舐め回したりする生活を送っているうちに、まだ感染していない子どもも次々に感染していきます。
感染してもほとんどの子どもは無症状ですし、症状が出たとしても風邪程度ですから、感染したことに気づかれることはないのです。

このように、もともとCMVに感染している園児たちがいっぱいいる保育園・幼稚園の中に先天性CMV感染児が入っていったとしても、何も変わることはありません。
だから隔離の必要も意味も全くありませんし、入園拒否なんてもってのほかなのです。

感染予防に留意すべきなのは妊婦さんですが、保護者の中には現在妊娠している人やこれから妊娠する可能性のある人がおられるわけですから、全ての保護者に基本的な予防方法(妊娠中の感染予防のための注意事項-11か条)を知っておいてもらうべきでしょう。
その際、園児に先天性CMV感染児がいることを伝える必要はありません。
繰り返しになりますが、先天性CMV感染児がいようといまいと保育園や幼稚園にCMVはもともとたくさん存在するわけですし、それに感染した我が子からご自宅にいる間に感染する可能性の方がずっと高いのですから。
妊婦は各自で「ご家庭の中でご自身のお子さんからの感染」を予防するしかないのです。

先天性CMV感染児に対して、感染拡大防止の観点では全く普通の対応をすれば良いことを述べてきました、とは言っても、この子達に対して気にかけてほしいこともあります
先天感染児の後発症状を見落とさないようにしてあげてほしい、ということです。
耳が聞こえにくくなってないか、見えにくくなってきてないか、発達障害がでてきてないか…などです。
一日の内の多くの時間を過ごす保育園や幼稚園ですから、そこでぜひ症状の進行があれば気付いてあげてほしいと思います。

ポイント!
  • 園内にもともとCMVは存在するので、先天性CMV感染児を拒否・差別・隔離をする意味はない。
  • 全ての保護者に予防法を知らせるべき。その際、先天性CMV感染児の存在を伝える必要はない。
  • 先天性CMV感染児の後発症状や症状悪化がないか、気にかけてあげる。

妊婦は各自で予防をするしかない妊婦は各自で予防をするしかない

既感染がいても、普通に接して問題ない。入園拒否・隔離の必要はない既感染がいても、普通に接して問題ない
入園拒否・隔離の必要はない

読売新聞夕刊で取り上げられました(2013/9/5)

(2)園医、校医にお願いしたいこと
先天感染児の症状を見逃さないでください

上記の内容を園のスタッフに指示、教育してほしいと思います。そして、スタッフのみなさんが疑問心配に思う事には適宜対応してください。
また先天感染児の症状をぜひ見逃さないでほしいと思います。
後発の障害があることを頭に入れながら、普段の健診を行う必要があります。

ポイント!
  • 乳幼児と係わるスタッフに正しく教育をする
  • 先天性CMV感染児の後発症状や症状悪化を見逃さないよう留意して健診をする

(3)保育士、幼稚園教諭(その他、乳幼児と係る職業の女性)自身が妊婦の時は特に注意!!

保育士や幼稚園教諭など、乳幼児と係る仕事をしていらっしゃる方には、母子感染症に、特に妊娠中に気をつけて頂く必要があります。
ただでさえ、乳幼児から様々な感染症をもらう可能性が高い職業ですが、妊娠中に感染することでお腹の赤ちゃんに影響をきたした例が、実際に何例も報告されています。(妊娠に気づく前の妊娠超初期から妊娠初期が最も胎児に影響が起きやすく危険です。)
また水痘(水疱瘡)はお腹の赤ちゃんだけではなく、妊婦ではとても重症化しやすく命に関わることもあります。

ワクチンで防げる感染症(B型肝炎、水痘、風疹、麻疹など)は妊娠する前に確実にワクチンを打ち予防してください。
もし妊娠しているのに、未感染であるか、ワクチンを打っていなかった場合、水痘や風疹や麻疹などに感染している人には近づかないようにしましょう。
もしこれらの病気に罹っている人に接触してしまったことがわかったら、すぐに病院に連絡して下さい。水痘や麻疹の場合は、すぐに免疫グロブリンの注射をすることで発症を防ぐことができるかも知れません。

サイトメガロウイルスに対する予防法としては、乳児クラスを避け、なるべく年長のクラスの受け持ちになるようにし、できるだけ唾液や尿に触れる処理は他の人に代わってもらうか行わないように気をつけてください。自分で行うときは必ず手袋をし、処理後は手洗いをよくしてください。

ポイント!
  • 乳幼児から様々な感染症をもらう可能性が高く、胎児に影響が起き得ることを自分も周りのスタッフも意識する
  • 妊娠前にワクチンを打ち予防する
  • できるだけ乳児クラスの受け持ちは避ける
  • できるだけ唾液や尿の処理は避ける
  • 唾液や尿の処理をするときは手袋を着用し、処理後は必ず手洗いをする

監修:長崎大学 森内浩幸

妊娠中の感染予防のための注意事項-11か条

11か条をかわいいイラスト付きでプリントサイズにまとめました。 トキソプラズマやサイトメガロウイルスの予防だけでなく、妊娠中の様々な感染症からの予防について書かれています。妊娠中の方も、周りに妊婦さんがいる方も、知っていただきたい内容です。

妊娠中の感染予防のための注意事項-11か条 イラスト

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11か条イラスト+解説(PDF)