tommyさんの体験談

出産から二日後、否定されていた「サイトメガロウイルス感染症」と診断されました。

体験談寄稿 NO.11 tommyさん

2012/11/20 追加

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Data

    • 2010年生まれ
    • 先天性サイトメガロウイルス感染症

STORY

28週目、切迫早産で入院。原因を探るための検査が始まりました。

28週目の妊婦検診で胎児腹水が発見され、近くの産院から、その日のうちに大学病院へ入院しました(胎児腹水、羊水過多、胎児水腫による切迫早産)。
24時間の張り止め点滴を受け、胎児腹水の原因を探るための検査が少しずつ始まりました。
何が起こったのか、これからどうなるのか、どうやって過ごしてよいのか分からず怖くて仕方ありませんでした。
入院した翌朝、突然、涙が溢れて止まらず苦しかったことを覚えています。
血液検査で疑われたのはパルボウイルスでした。

サイトメガロウイルス(IgM, IgG)はすでに抗体が出来ており胎児への感染は否定されました。

胎児MRIでは、腎臓や心臓、脳に異常所見はなく「胎便性腹膜炎」の疑いとなりました。
さらに染色体検査や心臓エコー専門医による検査を受けましたが異常なく、赤ちゃんの成長は順調で、腹水分を除いた推定体重、身長、頭部サイズは週齢通りでした。
胎児腹水以外の所見がなかったこと、私に抗体があり胎児への感染は否定されていたことからサイトメガロウイルスは疑われることはなかったのです。 

こうした検査が続く中、赤ちゃんは羊水をうまく飲めず、羊水は増える一方で、何度も羊水を抜く施術を受けました。
一回あたり1.8リットルもの羊水を抜いたこともありました(最終的には合計3リットル)。
羊水を抜いてもすぐに元に戻り、羊水過多で足先がむくみ、横を向いて寝ても脇腹が圧迫され痛みですぐに目が覚める日々でした。

その後、胎児腹水の検査のため、赤ちゃんのお腹に溜まっている水を抜きました。
胎児腹水の成分は30パーセントがリンパ液で「乳び腹水」の疑いとなりました。
予後は比較的良好ということで安堵していました。

しかし、腹水で胸部・肺が圧迫されており、肺も成長できていないとのことで成長促進のためステロイド剤を打ちました。
4度目の羊水除去を行うかどうかを検査した33週目、お腹の張りがあまりにも強いため、週明け朝一番で緊急帝王切開することが決まりました。

担当医は私のお腹のことを「双子のママの臨月よりも大きい」と言っていました。

帝王切開術中、今まで息苦しかったお腹がすっと軽くなり、小さな小さな声が聞こえました。
スタンバイしていた小児内科医が赤ちゃんを受け取り、「ママ見えるかな、すぐに挿管するからごめんね」と言い、大急ぎで運んで行くのが見えました。
腹水圧迫による肺低形成で人工呼吸器が必要でした。

その日、夫が小児科から説明を受け、ウイルス感染の可能性があると聞きました。
詳細な検査結果は分かり次第ということでした。

私は「乳び腹水」という診断がほぼ正しいと思っていましたし、ウイルス感染なら薬で治るだろうし、大丈夫だと思っていました。

翌日に初めてNICUに行き息子に対面できましたが、お腹は膨れ、たくさんの管につながれてとても苦しそうに見えました。
お腹の中でも大変だったろうに生まれてからすぐにこんなことになってしまって…申し訳なくて辛くて仕方ありませんでした。

出産から二日後、否定されていた「サイトメガロウイルス感染症」と診断されました。

出産から二日後、小児科から呼ばれ、夫もすぐに会社からかけつけ面談となりました。

そこで初めて、先天性サイトメガロウイルス感染症と診断されました。
なんと出生前からの腹水はサイトメガロウイルスが原因だったというのです。

赤ちゃんの血液検査での陽性反応、点状出血、血小板低下、肝臓肥大、紫班、黄疸、貧血、超音波エコーでの脳内石灰化(基底核や側室付近)が確認されたから、ということでした。

妊娠ごく初期に私が初感染したことによる赤ちゃんへの垂直感染があったこと、
予後として、視力異常、難聴、運動発達/精神発達への障害、てんかん、発達障害などがあるということでした。
初めて聞くウイルス名、私の初感染が原因、そんなあまりの衝撃に息ができなくなり、小さな声で質問するのがやっとでした。

「治療法はあるのでしょうか? 」
― ガンマグロブリンとガンシクロビル投与で、難聴に少し効果があるかもしれませんが、確立された治療法ではありません。

「石灰化の写真の白い点は小さいですが、障害との関連はありますか? 」
― 量の大小とは関係なく出ます。

「確率としてどのくらいですか? 」
― 100です。しかし、赤ちゃんの脳の発達は可能性がたくさんありますから。ママもご存知だと思いますが…

ということでした。

私は研究職で脳の発達に関する知識が多少あります。
先生たちもそれを知って教えてくれたんだと思います。
確かに赤ちゃんの脳には無限の可能性があります。
大人の脳でも同じです。そういう報告もあります。
だから、一部に石灰化があっても、最適な時期に最適な刺激を与えれば発達へよい効果があるはずです。
あの石灰化のある部位はどんな機能を持っていたかな…。
これまで勉強した知識がぐるぐると廻り、絶対に何とかしてみせると自分を奮い立たせていました。
夫も研究職なので、今後のウイルス治療のことや赤ちゃんの免疫システムとの関連など聞いてくれました。

病室に戻ってから二人とも言葉が出ずただただ涙が出る状態でしたが、治療は始まったばかり、出来ることはたくさんある、それを全てやろう、どこまでも調べて最良の方法をとろう、私たちはきっと出来ると奮い立たせていました…

私は仕事でお世話になっている神経科学の専門家の先生に連絡を取り相談に乗ってもらえるようお願いしました。
約二ヶ月間にわたる息子の治療は、比較的順調だったと思いますが、尿中からはウイルスが検出されていました。
また、母乳も搾乳して冷凍保存していましたが、ウイルスが検出されたため全てを廃棄し一切与えないことになりました。
体内ウイルス値を減らすことが最優先するという理由でした。

腹水は少しずつ抜いていき合計800ccとなり、体重は2800gから2000gとなりました。
肺低形成の治療には窒素ガス吸入法が行われ、肺が大きく成長し抜管となりました。
貧血や黄疸の度合いに応じてガンシクロビル投与が調整され、MRIやABR、CTは退院直前(出産予定日頃)に行うことになりました。

私は出産後一週間程度で退院しNICUへ毎日通っていましたが、運動発達のリハビリや発達障害の本を買い、サイトメガロウイルスの文献を調べていました。

息子が充実した豊かな人生を送れるように最大限のことをしてあげたいのに、目や耳、脳、体の発達に影響が出るかもしれない…

なぜこんなことになってしまったのだろう、この子に出る障害は全て私にしてください、目も耳も体も脳も。
涙の出ない日はありませんでした。
でも、弱い自分の心に負けてはいけない、絶対大丈夫、そう強く信じていました。
大声で泣いたらこの現実を認めることになる、そんな気持ちだったのです。

 退院前の検査結果では、尿中からウイルス検出、その他は異常なくMRIでも週齢相当ということでした。
また、頭部CTでは石灰化がほとんど映っておらず、医師も驚いた様子でした(これはCTの撮像が5ミリ間隔であり映りにくかったため)。
特に問題がないので3ヶ月くらいして首の座りが遅いようなら療育センターを受診してくださいとのことでした。
色々な専門書を読む中で、子供の発達において「様子を見て」いるうちに、療育の最適時期を過ぎてしまっていると書かれていたこと、以前に主治医が3歳までのリハビリが勝負と言っていたことを思い出しました。

一ヶ月検診後から、リハビリ・通院が始まり、1歳まで続きました。

私たち夫婦は、療育・リハビリについては素人です。
初めての赤ちゃんで何かが違うということを発見することはあまりにも難しいと思い、首が座るのを待つのではなく、すぐに療育センターへ予約を入れるとともに、入院中のうちにリハビリ科の先生を紹介してもらい、月に一度のリハビリを受けたいと申し出ました。

療育センターでは急ぎで行うことは特になく、大学病院から提出されたMRI画像を診た医師より首は座るでしょうと言われました。

そこで、メインを大学病院での小児科発達外来とリハビリとし一ヶ月検診後より通院を続けました。
リハビリでは「一番のリハビリ施術者はお母さん、週に何度か通うのではなく、毎日自宅でどこかの時間で出来ることを続けることが重要」と言われ、自宅で遊びながら出来るリハビリを教わりました。
病院でのリハビリ開始時間に子供がベストコンディションになるよう前日からミルクや睡眠時間を調節しながら病院へ向かいました。
また、リハビリの先生には、現在の課題とリハビリの意味/効果、次回までにどんな変化があるとよいのか、次の発達段階との関連などをみっちり聞きました。

先生曰く、「リハビリは羅針盤みたいなもの、目的地まで船を進めるときに、羅針盤がほんの少しずれるだけで、到着する地点はだいぶ違ってしまう、早めに修正すれば到着地点のずれは少なくなる、どの子も最後はちゃんと歩くようになるけれど、その修正は早いほうが効果は高い。」
確かにその通りです。

息子はずりばい時期に左右差があり(片手を支えにしたほふく前進)、心配した時期がありましたが、リハビリによってバランスよく誘導できたと思います。
1年が経過し、心配ないですよと太鼓判をいただき卒業となりました。

その後、リズム運動を基本とする保育園に入園するために引越しました。

脳の発達とリズム運動を融合させた保育理論を、一緒に研究を進めている上司から教わっていたからです。
私は息子に何らかの後遺障害が出ると言われてから、これは長期戦だと思い、息子がNICU入院中にリズム保育を実践している保育園に相談に行っていました。
この園では障害児も受け入れており、仮に息子に障害があっても発達に応じたリズムや身体のマッサージ等を取り入れてくれるということでした(加配あり)。

幸いなことに、現在、息子は発達の遅れもなく元気いっぱい成長しております。
出生直後からの治療、リハビリの効果もあると思いますが、保育園での一年は息子を大きく成長させてくれました。
身体の癖を見つけ職員皆で対処してくれたことも多々ありました。

今は、半年に一度の発達フォロアップを受けています。

サイトメガロウイルスの後遺障害への不安はずっと続いています。
毎日、息子が音(電車や鳥の鳴き声)に気づき、教えてくれるとき、ほっとします。ちゃんと聞こえているんだと…

感染児を持つママは皆、色々な不安を抱えて過ごしています。
もし、自分の抗体有無を知っていたらこの子はどうなっていただろうか?と。
母子感染と言えば、風疹やエイズ、インフルエンザという妊婦さんが多いのではないでしょうか。
私もそうでした。
多くの方々にこの母子感染の現状を知ってもらい、知識として知っていて欲しいです。
妊婦検診での抗体検査、新生児スクリーニングが受けられる医療体制が早期に整備されることを願います。そして、有効なワクチンの開発とガンシクロビルを代表とする抗ウイルス薬の適応拡大、最適な治療法の確立を望みます。そして、ママになる全ての女性が安心して妊娠/出産できるよう、この患者会を通じ母子感染の現状が少しでも改善できるよう出来ることから進めていきたいと思っています。

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