焼餃子さんの体験談【CMV患者会員】

息子の出産を機に知った、“サイトメガロウイルス感染症”。『何で息子なの?』と、病気を告知されてから、思わなかった日は無かったと思います。

体験談寄稿 NO.9 焼餃子さん

2012/11/03 更新

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Data

  • 2009年生まれ
  • 先天性サイトメガロウイルス感染症

STORY

“早いけれど、おしるし?”

私には3歳の息子がいます。
2009年6月27日、36週と5日の早産で生まれました。(予定日は7月20日)

出産日の前々日に出血。
“早いけれど、おしるし?”
産院に電話すると、内診によるものでしょうとのこと。
その時の症状は出血のみだった為、様子をみていましたが、翌日、腰の鈍痛。
診察を受ける気持ちで、診察開始時間前に産院に行き、内診を受けると、なんと子宮口が3cm開いているということで、即入院。
初めてのNSTで、陣痛がついていると言われ、驚いたのを今でもよく覚えています。

“まだ臨月にも入っていないのに…。”

と不安な中、再び今度はエコーでの診察。
推定で2200gと言われ、時期的に早く、小さめではあるけれど、生まれても、自力で生きていける大きさとの先生のお言葉。
このままお産の進みが見られず、落ち着けば一度退院と言われ、ひとまず部屋で安静にしていると…破水。
しばらくすると、約10分間隔で鈍痛が襲ってきて、時々子宮口の開き具合を見に来てくれる助産師さんに励まされ、耐えながら、夜中一晩中、ベットの中で過ごしました。
翌朝になっても、子宮口がなかなか全開に近付かない為、陣痛促進剤の点滴。
入院した日の夜から翌日の出産まで、約14時間程の陣痛の末、11時19分、1904gの男の子誕生。

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小さく生まれた為、抱くことも出来ず、すぐに保育器へ。

立ち会った主人はこの時、「こんなに小さくて大丈夫か。」と、心配したそうです。
私が産後、初めて対面したのは、保育器越しでしたが、愛おしくて愛おしくて堪らなかったのを、今でもよく覚えています。
“私達のところへきてくれて、本当にありがとう”…と。

入院中に行われた、『新生児聴覚検査』。
再々検査をしても、“右耳の反応が取れない”と言われ、不安になる私。
そしてそんな中、産後間もなく、私はうつ病を再発。
小児科医からは、「片耳が聞こえていれば、急ぐことはない。」と言われ、「落ち着いたら大きな病院を受診して、詳しく調べてもらって下さい。」とのことで、1ヶ月健診が終わってから、頂いた紹介状を持って、『埼玉県立小児医療センター』の耳鼻科を受診。
脳波の検査と共に、可能性も考えて、任意でしたが、『サイトメガロウイルス感染症』の検査も勧められ、受けることに。

新生児聴覚検査の結果、ほとんど聞こえていないことが明らかに。

…検査結果は、“右耳の聴力はほとんど聞こえていない、ほんの僅かに聞こえる程度”。

そして、数日後、突然の病院からの電話で告知された、この時初めて聞いた、息子の病名、
『サイトメガロウイルス感染症』。
息子の場合、右耳の難聴の原因は、この『サイトメガロウイルス感染症』が原因だったのです。

急な電話で、初めて聞く病名、突然の告知に私の頭の中は真っ白。
パニックでまともに話せない私の代わりに、主人が電話で説明を受けました。

そこからは、あれよあれよと流れていき、入院。

投薬治療をしないという選択肢もありましたが、その場合、ウイルスが増え、右耳だけでなく、他の臓器も冒されることがあるとのこと。
肝機能障害、血小板減、発ガン性、生殖器への影響という意味での副作用についても説明を受けました。
そして、投薬治療を選択しない親御さんもいらっしゃるということも。
少し悩みましたが、他への影響は出来るだけ無くしてあげたいとの想いから、投薬治療を選択。
『バンガンシクロビル』(バリキサ錠)という薬での治療を開始。

約3週間の入院中、CTとMRI検査も行いました。
結果、脳に白いモヤ(石灰化)が見られるとのこと。
ただし、正常な場合でも、低年齢では見られることもあり、ウイルスによる影響かは、この時点で判断出来ないとのこと。
2歳で再びMRIをすることになりました。

退院後、しばらく自宅での投薬を続けていましたが、一度ウイルス値が落ち着いた為、一時中止。
その後、2週間に一度の通院の度に行っていた採血と尿検査で、再びウイルス値が上昇した為、投薬を再開。結果的には、半年以上投薬治療をしていたと思います。

通院の度に採血で泣き叫ぶ息子。
泣きやむまで抱っこしている間、何度も、「ごめんね、ごめんね。」と心の中で繰り返していたこと、忘れません。

成長につれ、血中からのウイルスも検出されず、尿中のウイルス値も安定し、2度目の投薬中止。
経過が順調なこともあり、2週間毎から1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、半年毎と受診間隔が延びていきました。

2歳のMRIの結果、白いモヤはほとんど消え、「恐らく大丈夫でしょう。」との言葉と共に、念の為、5歳になったら知能検査をすることに。

現在…

*埼玉県立小児医療センター
・感染免疫科(診察) → 6ヶ月に1回
・耳鼻科(聴力検査・診察) → 6ヶ月に1回
・サイトメガロウイルス外来 → 4ヶ月に一回
・眼科 → 不定期
*目白大学クリニック
・耳鼻科 → (定期健診)
・言語療法 → (不定期)
に受診しています。

発達の遅れは診断的についていないものの、まだ完全に否定された訳ではありません。
ですが、定期的に診て戴いているので、その時々に、息子に応じた検査や訓練が必要になった時は、大好きな息子と共に精一杯取り組んでいきたいと思っています。

息子の好きなこと~今までを振り返って。

3歳の息子は、電車と新幹線に夢中で、見るのも乗るのも、プラレールで遊ぶのも、大好き!
2歳から始めた『リトミック』も、習い始めて1年が経ちました。
来年は幼稚園入園。
時が経つのはあっという間です。

息子の出産を機に知った、“サイトメガロウイルス感染症”。
…妊娠中、自分なりに、普段以上手洗い・うがい・体調管理に気を配ってきたつもりでした。
“抵抗力が落ちていたの?”
“どこで感染したの?”
そして、
『何で息子なの?』
と、病気を告知されてから、思わなかった日は無かったと思います。
今でも思う時があります。
そんな中で、
“他のお友達よりゆっくりでも良いじゃないか”
“それも息子の個性”
“きっと意味がある”
と思える様になるまで、時間はかかりました。

…私の様に、『サイトメガロウイルス感染症』という病気を知らない方々がまだ沢山いらっしゃることと思います。
この病気を一人でも多くの人に知ってもらいたい。
妊婦健診時、抗体検査の必要性。
病気が分かってから出来る胎児への治療。
ワクチンの開発、導入。

求めたいことは沢山あります。

一人でも、少しずつでも、この病気を患うお子さんが減ること、心から祈ると同時に、小さな小さな力ですが、私に出来ることを、出来る範囲でやっていきたいと思っています。

photo息子の好きな電車(3歳)

 

妊娠中の感染予防のための注意事項-11か条

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