(3)愛猫の動物病院のかかり方は?

製薬会社や研究者が専門家向けに発信する情報の中には、猫からのトキソプラズマ排出を薬で予防するという話題が取り上げられることがあるようです。しかし現状は、多少なりとも効果がありそうな薬について獣医師・研究者が個人的意見を述べあっているにすぎない段階です。
「妊娠中は猫にこの薬を飲ませて置けば安心」といった予防薬が実用化されているわけではありません。
だからこそ妊娠中は猫との関わり方が重要になるわけです。

猫がトキソプラズマに感染したことがあるかどうかは動物病院で検査すれば分かります。
妊娠を希望される場合は愛猫のトキソプラズマ感染歴について検査をしておくことをお勧めします。
なお現状では一般の動物病院ではトキソプラズマ検査を行う機会はあまりありませんので、いきなり動物病院を受診しても検査できないかもしれません。
トキソプラズマの検査を希望していることを連絡した上で受診するとよいでしょう。
ネコの血液をほんの少し採取できれば検査そのものは1-2日で終了します。
多くの動物病院では、病院内で検査するのではなく検査機関に血液を送ることになりますので、結果が分かるまでさらに数日よけいにかかるかもしれません。

そして検査の結果、あなたの愛猫に「感染歴なし」という結果が出た場合は、妊娠中の生活にそれなりに注意が必要になります。

時々、ネットなどで「動物病院で検査してもらったら、うちの猫は感染していなかったので安心した。」といった間違った記述を目にすることがあります。
「感染したことのある猫」よりも「感染したことのない猫」のほうが危ないというのがこの病気の特徴です。
この点を混同しないように十分注意してください。
獣医師から十分な説明がなかったのか、あるいは飼い主と獣医師のコミュニケーションがうまくいっていないのかは分かりませんが、検査結果の意味を正反対に理解されているわけで非常に問題があります。
実はトキソプラズマ症は一般の臨床獣医師にとってあまりなじみのある病気ではありません。
獣医師も人間ですから、いつも診なれている病気にくらべてうまく説明ができないということもあるかも知れません。獣医師の説明を聞いて分からない部分があれば、遠慮せず質問すると良いと思います。

また過去の感染だけではなく、今現在、愛猫の糞の中にトキソプラズマが含まれているかどうかを調べたいという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし検査しても虫体はまずみつかりませんのでトキソプラズマ検出を目的とした猫の検便はお勧めできません。
猫の一生は10年以上に及ぶわけですが、このうちトキソプラズマの虫体を排出するのはたった10日間程度です。偶然にもこの10日の間に検査を実施しない限り虫体は検出されないのです。
また、今日実施した検査でトキソプラズマがいなかったからといって、明日もいないという保障にはなりません。 これでは何のための検査か分かりませんので積極的に実施する意味がないわけです。
トキソプラズマの検出を目的とした猫の検便を動物病院にお願いしても断られることが多いと思いますが、こういった事情です(注5)
愛猫の検便ができないからといって気に病む必要は全くありません。

  • 感染歴の有無を検査するには、事前に連絡してから動物病院にかかると良い。
  • 「感染したことがない」猫のほうが危険であることを忘れない。
  • 猫の検便をしてもあまり意味がない。

注5) 実は猫の糞便からトキソプラズマを見つけるのは慣れないと難しい検査ですし、一般の動物病院ではトキソプラズマを見たことがある先生は少ないと思います。中には検査が無意味だからという理由ではなく、自分の技術では無理だという理由で断られる先生もいらっしゃるかもしれません。愛猫の主治医にそういわれると不安を抱かれるかもしれませんが、臨床上あまり意味のない検査なのでわざわざ時間をかけて習得しておられないだけのことです。獣医師としての技術が劣っているわけではないので心配は無用です。いずれにしてもトキソプラズマを対象とした検便はあまり意味のない検査ですので、わざわざ実施可能な動物病院を探すまでもないでしょう。

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妊娠中の感染予防のための注意事項-11か条

11か条をかわいいイラスト付きでプリントサイズにまとめました。 トキソプラズマやサイトメガロウイルスの予防だけでなく、妊娠中の様々な感染症からの予防について書かれています。妊娠中の方も、周りに妊婦さんがいる方も、知っていただきたい内容です。

妊娠中の感染予防のための注意事項-11か条 イラスト

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