みかさんの体験談【CMV患者会員】


妊娠中、せっかく検査をしていたのに、産婦人科の先生は、なぜ大丈夫とおっしゃったのだろう。
私に知識があれば、IgMとIgGの値を出す検査もしてもらえたのに…

体験談寄稿 NO.19 みかさん

2021/06/25 更新

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Data

  • 2012年生まれ
  • 出生時、早産、血小板減少などの症状。
  • 出生後4ヶ月、先天性サイトメガロウイルス感染症と診断、治療開始。
  • 現在、両側高度難聴あり。

STORY

苦しさは消えない

早いもので、長女が生まれてから9年が経とうとしています。
このたび、このような機会をいただき、体験談を書き改めました。
あのころのことを思い出すと、胸が苦しくなり、涙がこぼれ、なかなか書き進めるこ
とができませんでした。
長女が先天性CMV感染症であることを受け入れ、必死に育ててきたつもりですが、
やはり今でも、「私のせいで長女に障がいを負わせてしまった」という苦しい思いが消えないのです。
それでも、私の経験がどなたかのお役に立てるのであれば…
その一心で、書き改めました。

予定日より2か月も早い出産

平成24年8月。
予定日より2か月早く、極低体重出生児で長女は生まれました。
明け方から腹痛があり、通院していた産婦人科を受診したところ、すでに子宮口が全開になっているというのです。
NICUのある総合病院に救急車で搬送され、自然分娩で出産。あっという間でした。
翌日、私はNICUに入院した我が子と対面しました。
保育器の中で、点滴や呼吸器が付けられた小さな小さな赤ちゃん…。
泣くまいと思っても、次から次へと涙が溢れ、止まりませんでした。
抱っこしてあげることはできず、保育器の窓から手を入れて小さな背中をなでてあげることしかできませんでした。
主治医の先生から、長女には新生児一過性多呼吸、黄疸、動脈管開存、血小板減少などの症状があるとの説明を受け、治療を開始しました。
幸い、治療によって症状は改善し、10月下旬ころから退院のお話がでるようになりました。
待ちに待った退院。やっと長女と暮らすことができる。
私は、喜びでいっぱいでした。

2か月の入院後、退院間近で聴力検査での異常発見

そんな時、主治医の先生から、聴力検査(AABR)が2回ともパスできず、医大病院での精密検査が必要であると告げられました。
さらに、先生は「念のため、サイトメガロウイルスの検査をしましょう。サイトメガロウイルスに胎内で感染していると、難聴になる場合があるので…」とおっしゃったのです。
サイトメガロウイルス?
胎内感染?
そんなはずはない。検査をして、抗体があると言われたもの…

妊婦健診でのサイトメガロウイルス抗体検査の記憶

私は妊娠中のことを思い出していました。
妊娠4か月の時、通っていた産婦人科で血液検査をしました。
検査項目の中に、サイトメガロウイルスもトキソプラズマも入っており、自費での検査でした。
先生から、「サイトメガロウイルスって、聞いたことがないかもしれないけれど…。あなたには抗体があるから大丈夫です。」と検査結果を説明されました。
私は、「サイトメガロウイルス?聞いたことがないな。でも、抗体があるなら、大丈夫なんだな。良かった。」と思いました。
長女の主治医の先生にその旨を話すと、産婦人科での検査方法では妊娠前から抗体があったのかという事実は分からず、最近(つまり妊娠中に)、感染して数値が上がっていた可能性があるというのです。
私の当時の検査結果は、CF法で16倍。
陽性反応でした。
(※通常であれば初めの抗体検査で陽性だった場合は、妊娠中の初感染かどうかの確認をする必要があります。詳細はhttp://toxo-cmv.org/cmv.html抗体検査で今感染しているのか、以前に感染していたのかがわかりますか?をお読みください。)

精密検査により、長女の重度難聴が発覚・確定

待ちわびた退院でしたが、長女は難聴かもしれない、原因は私がサイトメガロウイルスに感染したからかもしれない…と思うと、全く喜ぶことができず、不安でいっぱいでした。
11月下旬、医大病院での精密検査(ABR、ASSR)の結果、娘は両耳とも重度難聴であることが分かりました。
医師から、「私たちの声など、音は全く聞こえていません。」と告げられ、目の前が
真っ暗になりました。
私の声が聞こえていないなんて…
冷たい風が吹く病院の駐車場を、涙を流しながら娘を抱いて歩いたあの日の辛さ。
私は、一生忘れないと思います。

先天性サイトメガロウイルス感染症の確定診断

ますますサイトメガロウイルス感染症の疑いが強くなり、詳しく調べるため、へその緒を提出しました。
しかし、検査結果が出るのは2~3か月かかるとのことでした。
へその緒の結果を待っていては、それだけ治療を行うのも遅れてしまいます。
12月初め、主治医の先生は、
・ 長女の尿と血液からウィルスが出ていること
・ 私の血液検査(IgG、IgM)から、まだ抗体ができていない状況であること
・ 早産、血小板減少、難聴などの症状が出たこと
などを総合的に判断して、先天性サイトメガロウイルス感染症に間違いないと診断しました。

抗ウイルス薬の投薬治療の開始

先生から、抗ウイルス薬(バリキサ錠)による治療の説明を受けました。
副作用の心配もありましたが、「もう後悔したくない」という思いから、夫と相談して治療を決断しました。

知識のない産科医師への疑問と、自分を責める日々

冷静に考えれば考えるほど、「長女に障がいを負わせたのは自分のせいだ」と思わずにはいられませんでした。
妊娠中、せっかく検査をしていたのに、どうして見落とされたのだろう。
産婦人科の先生は、なぜ大丈夫とおっしゃったのだろう。
私に知識があれば、IgMとIgGの値を出す検査もしてもらえたのに…
感染していると分かっていれば、大きな病院でよく検査してもらって、少しでも長くお腹の中で育てられたかもしれない。
治療も早くできたかもしれない。
そもそも、なんで感染したの?
小さな子どもと全く接触してないのに…
私は、たくさん後悔していました。
後悔してもどうしようもありませんでしたが、自分を責めずにはいられませんでした。

地域によって異なる療育

重度難聴が確定したものの、私が住む県には難聴児の診察や療育を行う病院は一つしかありませんでした。
そのため、初診の予約も2か月先。
もどかしい日々でした。
待ちに待って診察等を受けましたが、「娘さんは発達の遅れがあり、難聴の原因がサイトメガロウイルスですので、知的障がいや発達障がいも伴う可能性が高いです。そのため、人工内耳をしても、効果がないと思います。今は様子を見ましょう。」と耳鼻咽喉科の医師に告げられました。
難聴の早期発見、早期療育が重要だと言われているにも関わらず、原因がサイトメガロウイルスであるために扉が閉ざされてしまったように感じました。
情報を集める中で、インターネットを通じて県外の病院や医師の情報を得ることができ、長女が6か月の時に隣県の病院に転院しました。
それから、週に1度、車で片道2時間かけて隣県の病院に通い、療育を受け、言葉と心を育てるために家庭でも丁寧に長女と関わってきました。
私が住む県の医師には「効果がないと思う」と言われた人工内耳でしたが、1歳半と2歳2か月の時に手術を受け、少しずつ言葉を獲得していきました。

現在の状況

現在、長女は小学3年生です。
週に1時間、市内の「ことばの学級」での通級指導を受けながら、学区の小学校に通っています。
3歳の時に強度遠視も発覚し、治療用の眼鏡をかけています。
マスクもかけなければならないため、人工内耳に眼鏡にマスク…長女の耳周りは大変なことになっていますが、嫌がらずに全てつけて学校生活を送っています。
お友達や先生にも恵まれ、楽しく過ごしている様子です。
習い事では書道を頑張っており、コンクールでも上位入賞しています。
家庭では、長女に続いて男の子を二人授かり、長女は二人の弟のお姉さんです。
私は育休をいただきながら、なるべく子どものこと、とくに長女の療育を優先させてきましたが、長女が2年生の時にフルタイムで本格的に仕事に復帰しました。
長女が先天性CMV感染症で、重度難聴で…と分かったときは、「私は仕事を辞めなければならない」と思いましたが、家族の協力、そして何より長女が元気に成長してくれたおかげで仕事を続けることができました。

妊婦自身が正しい知識を持ち、医師が早期発見・早期治療を施せるようになってほしい

自分の体験を通して、トーチ症候群に関する正しい知識、予防、早期発見、早期治療が大切であると実感しています。
ただ、私の場合、知識があっても、感染を防ぐことができたかどうか分からないというのが本音です。
妊娠初期、ちょうどインフルエンザや風邪が流行っている時期でしたので、手洗い、うがい、マスク着用など、予防に努めていたのに感染したのですから。
強いて言えば、仕事が忙しくて無理をしていたため、免疫力が落ちていたのが、感染した理由かもしれません。しかし、働く女性なら、妊娠中であっても、多少無理をしてしまうと思います。
予防に努めても感染することもあり得ます。
しかし、万が一、先天性サイトメガロウイルス感染症の赤ちゃんが生まれてきても、早期に発見し早期に適切な治療を行えれば、症状を悪化させずに済みます。
小児難聴児の療育に関する勉強会に参加する中で、「先天性CMV感染症の新しい長崎県診断システム」というシステムがあり、長崎県では妊娠中、出産後に産科・小児科・耳鼻咽喉科が連携して早期診断、早期治療を行っていることを知りました。
このようなシステムが、全国的に広がってほしいと思います。

母親への早期フォローの必要性

私もそうでしたが、母子感染症であるという事実のせいで、母親は必要以上に自分自身を責め続けてしまいます。
もし病気の発見が遅れ、早期に治療を施してあげられなかったとなれば、自分を責める気持ちはさらに深まっていき、心身ともに、疲れはててしまいます。
母親が一日も早く笑顔で赤ちゃんに接することができるよう、家族や医療関係者の方々には十分配慮していただきたいと思います。

母親が孤立しないために

私は、同じような悩みを抱える母親達とこの患者会やインターネットを通じて知り会うことができ、たくさん勇気と元気をもらいました。
前向きな気持ち、笑顔を取り戻すことができました。
病気に対する情報が少なく一人で悩んでいる母親たちに、患者会の存在を知ってもらいたいです。

社会に求める事

私が体験したことと同じようなことを繰り返さないためには、一刻も早く、母子感染症の検査・治療体制の整備や医療従事者たちの認識を上げる必要があります。
国や行政機関、小児科、産婦人科等関係者の皆様には、早急に動いていただきたいと願わずにはいられません。
「私のせいで…」と涙を流す母親を一人でも減らしたい、なくしたい。
私のような辛い思いを、これから赤ちゃんを迎える方にはしてほしくありません。

成長・疾患の記録

平成24年2月 妊娠判明
同年4月 血液検査 サイトメガロウイルスCF法で16倍
同年8月 予定日より2ヶ月早く出産
同年10月下旬(2ヶ月) 聴力検査で精密検査が必要に

サイトメガロウイルス感染症の検査開始

同年11月中旬(3ヶ月) 両耳高度難聴と判明
同年12月中旬(4ヶ月) 抗ウイルス薬による治療開始
平成25年1月下旬 治療終了

2013/07/06寄稿
2021/06/25更新

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