猫とトキソプラズマ(猫を飼っている妊婦さんと妊娠を望む方へ)

岐阜大学 応用生物科学部 獣医寄生虫病学分野 准教授 高島康弘先生

“猫を飼っている” 妊婦さん、妊娠を望む方へ

トキソプラズマは猫だけでなくほとんどすべての哺乳類・鳥類に感染します。
しかしネコ科以外の動物に感染した場合、トキソプラズマは動物の体内から出てくることはありません。
ですからネコ科以外の動物からトキソプラズマが人間にうつるのは感染した動物の肉、たとえば豚や牛あるいは鶏の肉(筋肉だけでなく脳などの臓器も含みます)を生で食べた場合に限られます。
これに対してネコ科動物が感染した場合、糞の中にトキソプラズマの虫体が排出されます。
しかもネコ科動物の糞に混じって排出される虫体はオーシストとよばれる非常に丈夫な構造をしており、
一般的な消毒薬で殺すことができません。
そればかりか土や水の中に紛れ込んで数ヶ月間にわたって生き続けます。
したがって感染した猫の糞に汚染された土や水も感染源となるわけです。
猫と他の動物ではこのような違いがありますので、トキソプラズマ症の予防を考えるとき猫については特別な対応が必要になります。
本稿では、猫を飼われている妊婦さんや妊娠を望まれる女性に知っておいていただきたいことをまとめました。

(1)どんな女性にとって危険なの?
妊娠前からトキソプラズマに感染している女性にとっては何も問題ありません。
まずは自分が感染歴があるのか、いつ感染したのかを知ることが大事です。
(2)どんな猫が危険なの?
「既にトキソプラズマに感染した猫」と、「トキソプラズマに感染したことのない猫」とではどちらが注意が必要なのか、正しく知ってください。
(3)動物病院のかかり方は?
トキソプラズマ症は一般の臨床獣医師にとってあまりなじみのある病気ではありませんが、飼いネコがトキソプラズマに感染したことがあるかどうかは動物病院の血液検査で調べることが可能です。
(4)何に気を付けて生活すればよい?
第一に猫をトキソプラズマに感染させないことです。そして第二に、万が一にも愛猫がトキソプラズマに感染した場合に備え、猫から人への感染ルートをあらかじめ遮断しておくことです。

猫に対して過度に神経質になることなく、また無防備になることもないようにしながら、楽しいマタニティーライフをすごしていただけることを願っています。

寄稿:岐阜大学 応用生物科学部 獣医寄生虫病学分野 准教授 高島康弘先生