「診断がつくというのは、当事者にとってどういうことなのでしょうか?」他、総合討論の質疑応答のご紹介

先日行われた第14回日本小児耳鼻咽喉科学会(5/23-24)シンポジウムでは、当事者の経験からわかる、医療者に改善してほしいこと、伝えたいことを発表しました。
総合討論では、藤さんに加え、代表渡邊も壇上に上がり、質問に答えさせていただきました。

総合討論で、医療者の先生方から私たちへ質問があったやり取りを一部ご紹介させていただきます。
医療従事者の先生方にぜひ読んでいただければと思います。

 

  • 臨床診断で先天性サイトメガロウイルス感染症とされてきたのに、なぜ、五年経ってまた臍帯を使った核酸検査をしたのでしょうか?
  • 診断がつくというのは、当事者にとってどういうことなのでしょうか?
  • 学校など、教育の場において、もっとこうして欲しかったという要望はありますか?

 


【医療者】臨床診断で先天性サイトメガロウイルス感染症とされてきたのに、なぜ、五年経ってまた臍帯を使った核酸検査をしたのでしょうか?

藤:
今回のシンポジウムに出るにあたり、はっきりさせておいた方が良いのではないかと渡邊さんにアドバイスを受け、研究班の先生に臍帯の検査をしてもらいました。 はじめは、臨床診断が間違っていたらどうしよう、と不安でしたが、 臍帯からCMVがでて確定診断となり、安心しました。 安心したというのは、これまでの対応や治療が間違っていなかったという点で、です。 もし違う病気で、違う治療法があったのにできなかった…ということがあるかもしれないと不安だったので、その点は安心しました。

 

【医療者】診断がつく(先天性サイトメガロウイルス感染症)というのは、当事者にとってどういうことなのでしょうか?

渡邊:
産まれてすぐならまだしも、何年も経ってからだと、特異的な治療はできないわけで、 診断名がつこうと、つくまいと、出ている症状に対して対応・治療をしていくしかないのだから、 原因を探ること、確定診断をすることに意味がないと医療者は考えると思います。
でも、なぜこの子は病気になったのかとずっとモヤモヤしたままいるのは辛く、 診断がつくことで、やっと納得できることもあります。
また、私たちはトーチの会としてピアサポートもしていますが、 ここでも、やはり診断がついているからこそ、おなじ経験をした仲間として関わり合えるわけで、 原因不明の難聴、原因不明の脳性麻痺などとされていたら、 トーチの会に入会することさえ考えることもないと思います。
つまりモヤモヤをずっと抱えたまま、共通の仲間にも巡り合えることのない人生を送ることになります。

藤:
臍帯を使って検査を行って確定診断されるまでは、臨床診断として先天性サイトメガロウイルス感染症とされていました。 これは、状況証拠を集めて、先天性サイトメガロウイルス感染症にちがいない…と推測して言われていたということです。
推測を診断名とすること自体は悪いことではないのですが、やはり、今ある症状に対して、きちんと原因を探り、確定診断をつけようという気概が、当時の担当医らにもっとあれば、難聴も何ヶ月も放置されることはなかったのではないかと思います。
そして、診断をつけるためには当然、見落としがあってはいけないわけです。
私たちの一番の願いは、とにかく、見落としを無くす、見逃さないで欲しい、ということです。 治療も療育も、見逃しがあっては何も始まりません。

 

【医療者】学校など、教育の場において、もっとこうして欲しかったという要望はありますか?

渡邊:
サイトメガロウイルスなどの先天感染の場合は、後から症状がでたり、進行したりすることも少なくないですし、 例えば聴力が落ちてきたとか、片側難聴が両側になってきたとか、そういう症状がでた時に、いち早く気づいてあげて欲しいと思います。
特に保育園や幼稚部など小さい子に触れる教育現場の先生方には、気をつけてみて欲しいと思い、私たちもホームページ内に、幼児に関わる先生たち向けのコンテンツをつくりました。
また、特別支援学校などには、原因不明の難聴や原因不明の脳性麻痺というお子さんがたくさんいて、その中には結構な数の先天感染の子が隠れているのではないかと思います。
ですから、学校の先生らが知識を持って、症状が新たに出たり、進行したりする子を見つけた時は、もしかして先天感染なんじゃないかと疑って、学校医に相談したり、親御さんにアドバイスするのもあって良いことではないかと思います。
藤さんのように後から確定診断をつけることもあり得ますし、それによって他の症状の出現に対して予測をつけたり心の準備ができたり、精神的にモヤモヤしていた霧が晴れたりすることもあると思います。 教育現場と医療が連携することも必要だと思います。